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韓国・ソウルの交通事情

韓国・ソウルのバス事情(4)

2004年の大リニューアルで
ソウルのバスの財政構造と運賃システムが激変
市民中心のバス政策を財布に・生活に優しく一石二鳥で変えた!

ソウルのバスはとにかく安い!嬉しい運賃体系

 2004年以前までのソウルのバス運賃は、日本と似ているようなシステムでした。また、乗り継ぎによる割引はなく、回数券や現金、旧型のICカードで運賃を支払うシステムでした。

2004年の大リニューアルで準公営化

 2004年の大リニューアルで、バス会社の財政を改善し、バスの運営にて発生した損した額をソウル市が補填するというような内容でした。これを準公営制といい、ソウル市内のバス路線を一貫的に管理するようになりました。
 準公営化の最も大きい目的は、バス会社が採算が取れない路線を廃止することを防ぐなど、市民へより便利な公共交通機関のサービスを与え、その利用を促すことでした。
 これは比較的に需要が少ない短距離路線や乗り継ぎが必要で売上が低調だった路線を抱えるバス会社や利用者には、もってこいの政策であり、結果的に赤字であるが生活に必要な路線などは、廃線されることなく、需要があれば基本的に生き残るようにできたのです。
 しかし、この政策は悪用される事例が昨今増え、ニュースに大きく取り上げられていますが、その内容はここでは割愛します。

運賃改革

 2004年の大リニューアルで最も話題になったのが運賃システムの変更でした。

都市型(一般)座席(中・長距離)高級・深夜座席
70013001400
03.03.10~04.06.30 単位はKRW(韓国ウォン)
幹線
○○●
支線
○○●●
広域
9○●●
循環
○●
マウル
区名○○
8008001400500500
04.07.01~07.04.01 ○はエリア番・●は固有番号 単位はKRW 詳しくはこちら

 また、従来の料金体系では、ICカードに限り乗り継ぎ割引が有りましたが、バス・バス、バス・地下鉄間の乗り継ぎで50ウォン割引がついていました。ソウル市内のバス料金は均一制だったため、一つの路線に乗り続けるほど得でした。しかし、バスを乗り継いで2路線乗ったときは、近距離でも700ウォン2回で50円ウォン引きで1350ウォンという値段だったので、一つの路線に乗り続けないと損するシステムでした。ここで、ソウル市がそういう市民に夢のような料金体系を実施します。

たくさん乗り換えても初乗りがタダ!

 なんと、ソウル市は5回目の乗車まで乗り継ぎでありば移動した距離のみを運賃として計算するという案を持ち出し、実行に至ったのです。2004年に実施した対距離制運賃体系は以下の通り。

  • 10km以内は初乗り料金
  • 10kmを超え、5km毎に100ウォン加算
  • 5回目の乗車まで乗り継ぎを可能
  • 乗車時と下車時にICカードで処理が必要
  • 下車後30分以内に乗車が必要(21時-翌9時は60分以内)
  • (バス)同一路線での乗り継ぎは無効

 ソウル市を走る地下鉄とバスの料金体系を一体化し、地下鉄とバス、またバス同士の乗り継ぎにて、初乗り料金を別で取らないようになったのです。
 この料金体系がソウルにて初めて適用された後、京畿道や仁川の地下鉄・バスにまで広まり、その3自治体で料金体系が統合されるようになる最初の一歩となりました。また、首都圏以外の自治体も、これをロールモデルにして適用した例が増えていきました。
 身近なところに韓国在住歴がある人が居れば、その人が日本に来て、「交通費が高い」・「乗り換えたらまた初乗りとるの?なぜ?」という疑問を持っている方を見かけたと思うのですが、これがその理由です。

ベースは保ったままの現在の料金体系

 この料金体系は市民にとても好評なので、ベースは変わらず幾度改正されたものの、15年間維持されてきています。

現在のソウル市内のバスの料金体系は以下のとおりです。

幹線
支線
深夜
N○○
広域
9○●●
循環
○●
マウル
区名○○
1200215023001100900
15.7.21~ ○はエリア番・●は固有番号 単位はKRW 詳しくはこちら
  • 10km以内は初乗り料金
  • 10kmを超え、5km毎に100ウォン加算
  • 5回目の乗車まで乗り継ぎを可能
  • 乗車時と下車時にICカードで処理が必要
  • 下車後30分以内に乗車が必要(21時-翌9時は60分以内)
  • (バス)同一路線での乗り継ぎは無効

 いかがでしょうか。現在は、この料金体系は、ソウル市内の公共交通手段だけでなく、京畿道や仁川のバスにまで適用の対象が広がり、距離を乗った分だけ、5回目の交通手段まで初乗りがタダになります。この料金体系が浸透した今は、首都圏なら何回かバスの乗り継ぎが必要な場所でも、加算料金を大きく気にせず自由に行き来できるのです。
 近郊都市間の移動でもバスが多く走っていて、乗り継ぎが必要不可欠な国柄もあって、それをまんまと狙った政策を実施することで、交通手段分担率にて自動車が占める割合が減少しました(若者の車離れも要因のうち一つではありますが)。
 また、日本の首都圏では鉄道の駅まで徒歩・自転車で移動し、それから電車にのり、また次の電車に乗り換えて移動することが圧倒的に多いですが、ソウルでは生活に自転車はそれほど活用されていません。何かしらのバスが住宅地の隅々まで浸透しているので、駅まで自転車に乗らなくても、そもそも鉄道を使わなくても中距離・長距離の移動が可能であるからなのです。移動速度は遅いですが、自転車に乗るならバスに乗る選択をする方が便利と考える人が多いので、バスを選ぶのです。

 余談ですが私も地下鉄の駅まで徒歩15分かかるところに住んでいましたが、いつもバスで駅に行きました(笑)。